コラム

快適暮らし術

プロ直伝!
失敗しないグリーンの育て方<後編>

住まいは家族が集い、語らい、心地良さを追求すべき場所です。「快適な暮らし術」をテーマに、収納、インテリア、家具、グリーンなどの専門家をお招きして、居心地が良い快適な住まいのテクニックをご紹介してまいります。

今回は、暮らしを豊かに彩るインテリアグリーンについて、グリーンの選び方・飾り方のコツ、センスアップテクニック、育て方の具体的ポイントまで<前編><後編>2回にわたりご紹介します。

黒木勝(くろき まさる)

第一園芸株式会社 伊勢丹府中店店長を経て商品販売事業本部店舗事業部スーパーバイザーと田園調布店店長を兼任。
ホテルや商業施設、店舗など花と緑のプロフェッショナルとして幅広く活躍。インテリアグリーンの幅広い知識やお客さまのご要望に応じた的確なアドバイスに定評がある。カフェや飲食店などのグリーン選びのコンサルティングも人気。

プロが指南!グリーンを家に迎えたときの
環境変化の対処法

お気に入りの大きなグリーンが見つかって、いざ家にやってきた。ところがしばらくすると、葉に異変が。黄色くなり、落ち始めるものも……。実はこういうケースは、よくあるのだそうです。
「グリーンに変化が出るのは、環境が変わったときです。グリーンを扱っているお店は、湿度を高く保ったり、風通しをよくしたりして、環境に気を配っていますが、ご自宅が同じような環境とは限りません。それで、葉が落ちることがあるんです」
ただ、これはそれほど心配はいらない、と黒木さん。
「グリーンは環境変化に対応します。黄色くなったり、落ちていく葉っぱは、湿度の高いところに環境適応して出てきた葉っぱなんですね。それが、環境が変わったために落ちていった。その後は、新しい環境に適応した葉っぱが出てくるんです」
特に、新しい環境になった最初の数カ月は、異変が起こることは珍しくないとのこと。ここで慌てたりせず、様子を見守ることが大切です。
「実はこれは、部屋の環境が変わるときも同じです。空調を使い出す時期だったり、部屋のレイアウトを変えたり、観葉植物そのものの位置を変えたりするときにも、何か変化する可能性があります。そういうときは、しばらく様子を見たほうがいいですね」

葉先が茶色くなるのは、乾燥が原因

パキラやフィロデンドロンのような初心者でも育てやすい観葉植物も、葉先が茶色くなってきたりすることがあります。
「ちょっと水やりを忘れても、すぐに回復してくれる強いグリーンですが、これは水やりの不足ではなく、葉っぱの乾燥が原因です。霧吹きをしてあげるといいですね」
根からの水分補給も、もちろん大事ですが、湿度にも極めて敏感なのがグリーン。とりわけ乾燥には気をつけなければいけないそうです。
「エアコンの吹き出し口からの風が直接当たる場所は避けたほうがいいです。とりわけ冬場は乾燥してしまうからです」
また、パキラなどは手入れをあまりしなくていいだけに、下の葉っぱが落ちていき、上だけがどんどん伸びていく、という悩みを持っている人も少なくないようです。
「上が成長して、中がスカスカになってしまうケースは、思い切って上を落としてみてください。そうすると、その切り口から、新しい芽が出てきます」
最も大胆な方法は、太い枝から出ている小枝の先から切って、すべての葉っぱを落としてしまうことだそうです。実はこれでも、ちゃんと新芽が出てくるといいます。
「勇気がいりますが、葉っぱだけを間引くよりも簡単です。ただし、季節に注意。成長期を迎える春や夏がいいでしょう」

水やりの頻度に「解答」なし

観葉植物は水やりのタイミングが難しい、という声もよく耳にするそうです。しかし、残念ながら答えはない、と黒木さん。
「水やりだけは、こうすればいい、というものはないんですよね。簡単に頻度を決められない。同じ観葉植物でも、環境によって1週間に一度がいいのか、二度がいいのか、変わってくるんです」
陽当たりや空気の循環度合い、乾燥の具合などによって、変えなければいけないのだとか。また、季節によっても違うし、エアコンを入れるかどうかによっても変わります。
「唯一、お伝えできるのは、鉢の表面の土が乾いてきたら、そろそろ水やりのサインだということです。それを見ながら、自分で頻度を決めていくしかない。購入するときに、おおよその目安だけは聞いておいて、そこから自分なりのペースをつかんでいかれるのがいいと思います」
それよりも注意しなければいけないことがあるそうです。鉢カバーなどに入れられている鉢には、中にお皿が敷かれています。水を多めにあげても、溢れるほどの量でなければこの皿が受け止めてくれるわけですが、ここに盲点があるのです。
「水を皿にためっぱなしにしていると、下から常に水が鉢の中に吸い込まれることになります。そのままにしておくと、水のやり過ぎで根が腐ってしまうようなことになりかねません」
上から水をあげていなくても、お皿にたまった水を吸収し続けてしまうことになるのです。
「だから大事なことは、お皿に水をためないこと。可能であれば、鉢カバーから出してベランダなどに持っていき、そこで鉢に一気に水をあげて、滴る水が収まってからお皿の上に乗せて室内に入れる、というのが理想です」
水やりの、意外な盲点でした。

窓越しの直射日光とベランダの直射日光は
似て非なるもの

グリーンは太陽が大好き、というイメージがありますが、実はすべての観葉植物が直射日光を好むわけではない、ということにも注意が必要です。
「明るく陽当たりのいいところのほうが、健康に育ちやすいのは事実ですね。モンステラのような大きな葉の観葉植物は、陽当たりが悪い場所では、葉に切れ込みが入らないこともあります」
ウンベラータやゴムの木など、光を好むグリーンは窓ごしの直射日光もOKなのだそうですが、いきなり外に出しての直射日光は大きな環境変化につながることを知っておいたほうがいい、と黒木さん。
「窓越しの直射日光は、直接の直射日光とはまったく違うんですね。ベランダに出して太陽の日にあてることは避けたほうがいい。ベランダに出すときは、日陰をお勧めします」
陽当たりが気になる場所に置く場合は、ときどき明るい場所に置いてあげるだけでも違うそう。
「LEDライトをあててあげるのも効果があります」
そして大事なことは、前編でもお伝えした「風」。グリーンは空気の動きを好むのです。だから、サーキュレーターなどを活用するのも有効です。
「地下鉄のグリーンはまったく陽が当たりません。でも元気なのは、空気の動きが大きいからだと思います。そのくらい、風は大事なんです」

虫が苦手な人向け!効果的な虫対策とは?

病害虫に強いグリーンとしては、ゴムの木の仲間のフィカスアルテシーマやサトイモ科のシンゴニウム、アンスリウム、ポトスやセロームなどを勧めるそうですが、絶対に虫が来ないとは言えない、と黒木さん。そこでやってほしいことがあると言います。
「葉っぱと葉っぱが重なり合う部分は、空気の動きがなくなります。そういうところが、危険なんです。ですから、葉っぱ同士がぶつかり合っているのを見つけたら、剪定してあげる。間引いてあげる。それを心がけてほしいですね」
最低でも年1回、定期的に植栽する。そのときは、新しい葉っぱかどうかに限らず、ぶつかって重なり合っている葉に注意したほうがいいそうです。
「もうひとつは、季節の変わり目に発生しやすいので、その直前に薬剤を使うことです。特定の病害虫向けのものではなく、病害虫全般に向けた薬がありますので、それを使うといいと思います。それほど強くないので、予防としてまいておくのに有効です」
固体でも液体でもかまわないそうです。事前に鉢の土の上にまく。
「気になる人は、春あたたかくなり始めるとき。梅雨のちょっと前。真夏が終わった秋口の年3回、まいておくといいと思います」
万が一、出てしまったら、水で湿らせたティッシュで手で捕殺するのが効果的だそうです。その後に、薬を散布する。
「これを1週間か2週間に2、3度行えば戻りますよ」
そして虫対策のためにも有効なのが、「風」。ベランダで風に当てることも、対策になるのだそうです。

実はグリーンは、とても強いのだと黒木さん。水のやり過ぎで、ブヨブヨになってしまっても、茎に緑色の部分があれば、そこまでの茶色くなっているところを切り戻しするなど、対処すれば、また新芽が出てくる可能性が高いのだそうです。注意すべきは、水をやり過ぎないことと、空気の動きを意識すること。これだけで、元気を保てます。
生活を彩るグリーンライフ、ぜひ楽しみましょう。

取材・文:上阪徹
兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスに。幅広く執筆やインタビューを手がける。著書に『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)、『職業、挑戦者 澤田貴司が初めて語るファミマ改革』(東洋経済新報社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『メモ活』(学研プラス)他多数。
Webプロデューサー・編集:丸山香奈枝
撮影:刑部友康

撮影協力:第一園芸田園調布店