コラム

暮らし快適術

収納を考えることは生活を見つめ直すこと。
キッチン収納術(3)

住まいは家族が集い、語らい、心地良さを追求すべき場所です。「快適な暮らし術」をテーマに、収納、インテリア、家具、グリーンなどの専門家をお招きして、居心地が良く快適な住まいのテクニックをご紹介してまいります。

「収納術(1)収納術(2)」に続き、本質を突いた片づけの考え方をベースに実践的な収納術を提案、テレビや雑誌で人気の整理収納アドバイザー、水谷妙子さんに引き続きお話をお聞きしました。3人のお子さんを育てるワーキングマザーでもある水谷さんの説く、暮らしを快適にする収納術、3回シリーズの最終回です。

水谷妙子(みずたに たえこ)

整理収納アドバイザー1級。夫と7歳の娘、5歳の息子、3歳の息子の5人暮らし。東京都在住。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業後、無印良品で生活雑貨の商品企画・デザインを13年間務める。手がけた商品は500点超。2018年「ものとかぞく」を起業し、個人宅の整理収納サービスやお片づけ講座を行う。雑誌やWEB、テレビで活躍中。ものについての幅広い知識や、独自の着眼点で発信するインスタが人気。著書に『水谷妙子の片づく家 余計なことは何ひとつしていません。』(主婦と生活社)、『水谷妙子の取捨選択 できれば家事をしたくない私のモノ選び』2020年11月26日発売(主婦の友社)他。

優先すべきは使い勝手

ただ片づけるのではなく、快適に暮らすための一助にするのが、水谷さん流。キッチン、洗面所、クローゼットについても、とにかく使い勝手の良さを優先して考えているといいます。きれいに見せたい、すっきり見せたい、というのは最後の最後に考えればいいこと。まずはいかに使い勝手をよくするかを考えるべきだ、と語ります。

<キッチン>

食品庫は在庫が見える透明ボックスを

キッチンの食品ストックをきれいに見せたい、と高さがあって、しかも透けていないボックスを食品庫用に買ってしまう人が少なくない、と水谷さん。
「でも、それだと中に何が入っているか、わからなくなるんです。食品庫で大事なことは、何が入っているのか、すぐにわかることです。中身が見えないと、在庫もわかりません」
使われているのは、無印良品の浅いボックス。これなら、透けている部分だけでなく、上からでも何が入っているかが見えます。
「私自身、食品の管理が苦手なんです。すぐにダメにしてしまいがち。だから、何がどこに置いてあるか、見えるようにしておきたい。また、保存できる数を絞り込んで、たくさん置かないようにしています」
子どもが3人いることもあって、とにかく手早くキッチンの仕事を済ませたいという水谷さん。最低限のものを揃えておくという管理法が、自分に合っていると語ります。

シンク下の収納には上フタをしない

シンク下の引き出しも何がどこにどのくらい入っているか、一目瞭然になっています。
「見えないようにフタをしよう、という収納方法を目にしたことがあるのですが、考えられません。毎日、使うものなのに一体、何の意味があるのでしょうか」
ボックスを使って収納しているため、背の高いものも、背の低いものも収納可能に。ジップロックやゴミ袋は、丸めて縦に入れています。
「ときどき、使用頻度をチェックします。あまり使わないものは、処分してしまいますが、処分に迷ったときには袋に入れて、処分候補のものとしてしばらく置いておき、やっぱり使わないな、と感じたら処分します」
スペースは大きいわけではありませんが、同じモノをいくつも置いたりしていないので、これで十分だそうです。

「使っていない食器」の最適な収納場所

料理が大好きで、お皿にもこだわっている。そんなお客さまのもとを訪問したことがあるそうです。しかし、実は使っているお皿はほんの一部。なのに、食器棚はいっぱいで、使い勝手の悪さに悩まれていたのだそうです。
「使っていないけれど、捨てられない。私が申し上げたのは、大事に持っておくほうが、実はよほどもったいないですよ。1年以内に使っていないものは、たいていこの先にも使われない可能性が高いんです」
処分しますか、と聞くのではなく、使っていますか、と尋ねることが効果的だといいます。
「やはりご自身で考えていただくことが大事なんです」
まず第一歩は、「1軍」「2軍」に分けること。ほとんど使わない2軍まで、毎日出し入れする食器棚に入れておく必要があるかどうか。そして、使わないなら、売るか処分する。
「今はネットでも売れる可能性があるわけですが、出品しても売れないことも多い。売れないものを家に置いておくと、これがまたストレスになります」 そのためにも期限を決めて、思い切って処分したほうがいいといいます。

収納ケースを増やすとなぜ危険なのか

無印良品のボックスをうまく使って、フォークやスプーン、シリアルやお菓子などが美しく揃えられたレンジ台の下の引き出し。しかし、こんなふうに美しくしよう、という発想から収納に入ろうとすると失敗する、と水谷さん。
「それは最後に考えることです。みなさん、これを真似ようとして、最初に無印や百均などに行って収納ケースを買ってきてしまうんです。必要のないケースまで買ってきてしまい、入れたいものが入らなくなったりする。また、逆に余計な収納ケースがものを増やすようなことになりかねない。人はスペースがあると、埋めたくなってしまうからです」
まずやるべきは、引き出しに入れるものをすべて出してみること。そして、小さな紙袋などを使って、試しに入れてみることだと言います。
「そうすれば、なるほど、このくらいの大きさの収納ケースがいくついるんだな、ということがわかります。それから買いに行けばいいんです。そうすれば、適切な大きさのものを適切な数、買うことができます」
必要な収納ケースをまずは確認する。それが、余計なものを増やさずに済むコツなのです。

在庫切れを確実になくす「自動発注ボックス」

玄関を入ってすぐにある縦に細長い据え付け収納クローゼットの最下段には、洗剤やシャンプーなどの在庫切れを起こさせないためのひと工夫があります。名付けて自動発注ボックス。
「在庫補充が必要なものは、使い終わるとここに入れておくんです」
1週間ごとにチェックされ、在庫が必要な商品を水谷さんの夫がスマホカメラでパチリ。それを持って、ドラッグストアなどで忘れずに買って帰るようにしているのだと言います。
「買うのを忘れないように、と夫がスタートしてくれた補充の仕組みです。これなら買い忘れがなくなりますから、とてもありがたいです」

<洗面所>

毎日使うから、取り出しやすさを何より優先

洗面所の鏡の裏側には、無印良品のボックスを使って化粧品などが収納されていますが、ここにも水谷さんのこだわりがあります。
「私は使い捨てのコンタクトレンズを使っているんですが、朝、メガネからここでコンタクトに変えるんですね。ですから、仕切りのプラケースにさっとメガネを放り込んで、すぐにコンタクトレンズを取り出せるようにしています」
朝一番のひと手間ほど、面倒なことはありません。何も考えずに、ストレスなくさっと行いたいもの。そのために最下段だけ空間が広く取られています。
「メガネを置くにも、コンタクトを取り出すにもすぐに行えるように、です。取り出しやすさが何より最優先です」
いつ、どんなことが起きると自分にはストレスなのか。不快なのか。それがわかっていれば、こんなふうに収納で解決することができるのです。

<クローゼット>

最大のポイントは、入れ過ぎないこと

寝室にある水谷さんのクローゼットを見せてもらいました。ハンガーラックに掛けられているのは、これだけです。
「クローゼットをストレスなく使う上で大事なのは、入れ過ぎないことです。そもそも服を着るのは、一人しかいません。実はそんなにたくさんの服を着ていないはずです」
掛ける量を減らすためにも、組み合わせをしっかり考えておくことだといいます。
「ここでも1軍、2軍の考え方で、分けておくことが大切です。2軍はハンガーから外して上のボックスに入れておきます」
分けることで、クローゼットを一杯にしないことが大切なのです。

できるだけハンガーに掛けるのには
“ある”理由が

クローゼットでひとつのルールにしているのが、着る洋服はボトムもシャツも、基本的にハンガーに掛けること。
「洗濯してハンガーで吊したまま、クローゼットにしまえるからです。そうすることで、畳む手間が不要になります」
使っているのはMAWAハンガー。ゆるやかなラインで、肩が引っかからないハンガーだから、ニットも掛けているそうです。
そしてハンガーの下の衣類ボックスにはアイテムの名前が手書きのシールで貼られています。自分のものなのに、なぜアイテム名が?
「洗濯は夫の仕事なんです。これを書いていないと、夫がどこに衣類をしまっていいのか、わかりません。だから、書いているんです」

「サヨナラ」ボックスを作っておく

着ていない洋服を、なかなか処分できない、という人も少なくありません。しかし、新しく洋服も買ってしまうので、やがてクローゼットが一杯になってストレスが……。
「まず、1年着ていないなら、処分を考えたほうがいいですね。今年着なかったものは、来年もきっと着ないからです」
ただ、やはり捨てるのは……というときには、「サヨナラ」ボックスを作っておくといいといいます。
「そこに避難させておくんです。よく着るものと一緒にしないことが大事。そうすれば、本当に必要がどうかがはっきりします」
一度「サヨナラ」ボックスに入れておくと、気持ちは定まりやすくなるそうです。

収納は、すべて行動に紐付いている、と水谷さん。誰が何を使っているのか、日々どう過ごしたいのか、やりたいこと、やりたくないことは何か……。一つひとつを考えていくことで、最適な収納がみつかり、快適な暮らしにつながります。
収納を考えることは、生活を見つめ直すこと。ぜひ、快適な暮らしのためのヒントにしていただけたらと思います。

取材・文:上阪徹
兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスに。幅広く執筆やインタビューを手がける。著書に『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)、『職業、挑戦者 澤田貴司が初めて語るファミマ改革』(東洋経済新報社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『メモ活』(学研プラス)他多数。
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