コラム

快適暮らし術

センスが光るインテリアグリーンの
選び方・飾り方
<前編>

住まいは家族が集い、語らい、心地良さを追求すべき場所です。「快適な暮らし術」をテーマに、収納、インテリア、家具、グリーンなどの専門家をお招きして、居心地が良い快適な住まいのテクニックをご紹介してまいります。

今回は、暮らしを豊かに彩るインテリアグリーンについて、グリーンの選び方・飾り方のコツ、センスアップテクニック、育て方のポイントまで<前編><後編>2回にわたりご紹介します。

黒木勝(くろき まさる)

第一園芸株式会社 伊勢丹府中店店長を経て商品販売事業本部店舗事業部スーパーバイザーと田園調布店店長を兼任。
ホテルや商業施設、店舗など花と緑のプロフェッショナルとして幅広く活躍。インテリアグリーンの幅広い知識やお客さまのご要望に応じた的確なアドバイスに定評がある。カフェや飲食店などのグリーン選びのコンサルティングも人気。

彩のある空間が際立つ大きめの観葉植物の
選び方

<提供写真>

居心地の良いカフェやレストランには、必ず置かれているものがあります。観葉植物です。百貨店や大きな商業施設、さらには銀行やオフィスでも、観葉植物が置かれています。
なぜグリーンが置かれているのか。それはグリーンに、さまざまな効果があるからです。人をリラックスさせる効果。空気をきれいにしてくれる効果。そしてなんといっても、心地良い空間を作ってくれるという効果。
となれば、毎日を過ごす家にもぜひグリーンを置きたいもの。実際、大きな観葉植物が一つあるだけで、家は大きく変わる、と第一園芸の黒木勝さんは語ります。
「例えば、セロウムのような育てやすい観葉植物は、小さなものもかわいいのですが、これが大きなものになると、力強い存在感が出ます。リビングに一つ入るだけで、空間は一気に変わるんです」
大きなグリーンをリビングに置いてみる。暮らしをさらに彩るための、一つの工夫なのです。

まずは気に入ったものを選べばいい

数あるインテリグリーンの中でもただ、大きなグリーンは存在感が大きいだけに、何を選べばいいのかに悩む、という人も少なくありません。そんな声にも、プロの答えはシンプルです。
「まずは、気に入ったグリーンを選べばいいと思います。葉っぱの形状だったり、高さだったり、植物の持つ雰囲気だったり。例えば、パキラはとても育てやすい観葉植物ですが、今は定番的な形のものだけでなく、いろんな樹形のものが出てきています。ちょっと変わったものを生産者が仕立てていて、そういうものも人気がありますね」
自分が気に入ったものであれば、意識がグリーンに向かいます。そうすれば、元気よく育つ可能性が高くなるそうです。育てるモチベーションも高まるからです。
「選び方のもう一つのコツは、部屋の中のどこをポイントにしたいか、です。自分がいつも座る場所なのか、そこから見える場所なのか、家族が集まる場所なのか。そのポイントの場所に合うものを考える、というのも一つの方法です」
いずれにしても、難しく考え過ぎないことだと黒木さん。自分を心地良くしてくれるグリーンを想像してみればいいのです。

複数のグリーンを組み合わせる、という選択

<提供写真>

一つグリーンがあるだけでも大きく変わる住空間ですが、実はこれが複数になると、さらに変わります。黒木さんは、目安としてリビングなら3つくらいの植物を置くことを提案します。
「人が過ごすための空間を作りやすくなるんです。しかも、異なる植物を置く。例えばカフェなどでは、いろんな種類のさまざまな植物が置かれていたりしますよね。それは、複数のグリーンを使って、人が過ごすための空間を作っているんです」
複数にするときのポイントは2つ。一つは、真反対のものを選んでみること。
大きな観葉植物を置いたら、小さなグリーンも置いてみる。例えば、エアプランツを空間に浮かべる。あるいは、セロウムのような葉っぱが大きくて少ない観葉植物に対して、ゴムの木のような葉の多い観葉植物を選んでみる。
「対比するものを選ぶことで、お互いを引き立たせることができるんです。グリーンにはいろんな個性がありますから、それをより前面に出せる。そして、そのグリーンとグリーンの間が、空間になるんです」

リビングのキーカラーを意識すれば
より洗練に

複数のグリーンを選ぶときのもう一つのポイントは、家のキーカラーを意識すること。例えば、ソファが青色なら青色を意識したものを考えてみる。
「色目でつなげることで、一体感が出やすくなります。今、注目しているものに、黒い葉っぱを持つ種類の観葉植物があるんですが、ソファが黒いなど、部屋のキーカラーが黒い場合には、この観葉植物はとても合うと思いますね」
また、葉の色やグリーンの雰囲気だけでなく、鉢やカバーなどの色目を合わせていくという方法もあるといいます。
「黒い葉っぱのものを黒い器に入れて置く。これでも、とても落ち着きます。一方で青いソファを置かれているのであれば、青系の色の鉢に入った観葉植物をお買い求めいただくのも、一つの選択です」
当然ですが、お店ではプロがその観葉植物に似合う鉢や鉢カバーを選んで飾っています。その鉢や鉢カバーにリビングのキーカラーが合いそうだということは、グリーンも似合いそうだということ。キーカラーをヒントにするのです。

置き場所は空間をさえぎるように

最近では、縦長タイプの鉢も人気だそうです。鉢の長さが1メートルほどもあるのですが、実は中は空洞で底上げがしてあります。植物の根と土が入っている部分は、上から20〜3センチほどだけ。だから、軽く持ち運びもしやすい。
「大きな観葉植物だと、どうしても下の根と土の部分が大きな鉢になってしまうのですが、縦長タイプの鉢だと、とてもスッキリしますね。下の部分に大きなスペースを取りませんから、部屋の中を移動するときに邪魔にもならない。とても人気です」
そして、こうした鉢もうまく使いながら、大胆に空間を作っていったほうがいい、と黒木さん。リビングに観葉植物を置く、となると、どうしても四隅に置くイメージがありますが、そうでない方法がある、というのです。
「空間をさえぎるように置いてみる、という方法です。それこそ、一つは部屋の隅に置きますが、もう一つは部屋の真ん中に置いてしまう。そうすることで、むしろ部屋に奥行きが出たりします。これこそが、複数のグリーンで空間を作る、という意味なんです」
こんなところに置くのか、という場所に思い切って置いてみる。そうすることで、リビングがこれまでとは違う輝きを見せてくれることがあります。

最も大事なのは、「風」があること

四隅に置かないという選択には、もう一つの理由があります。グリーンが光を好むことは多くの人が知っています。パキラやポトスなどのサトイモ科の植物は光に多少難があっても育てやすいのだそうですが、多くの観葉植物は光を好みます。しかし、もう一つ大事にしないといけないものがあるのです。それが「風」です。
「明るいところに加えて、風が動きやすい場所がいいんです。空気が循環する場所。それこそ、家族がよく通る場所は、人と一緒に空気も動きますから、グリーンにはとてもいい」
逆に、ほとんど人が通らない場所や家具などに囲まれている場所は空気が動きにくい。こういう場所は、枯れるリスクを高めてしまいかねないといいます。
「空間をさえぎるように置いてみるのは、そういう理由もあるんです。もちろん四隅でも構わないんですが、その場合は、10センチでも、20センチでも、壁から離してあげるといい。それだけでも風の通りがまったく変わります」
もし、それも難しいなら、サーキュレーターを使って、空気を循環させてあげるのも、一つの方法だといいます。考えてみれば、もともとは森の中で過ごしていた植物たち。風が心地良いのは当然です。さすがプロのアドバイスでした。

プロには部屋の写真を見せての相談が正解

家に合ったグリーンをどう選ぶか。そうはいっても、特に大きな観葉植物は迷うところです。家族の好みがさまざまだったりする場合もあります。
「もしよろしければ、お部屋の写真を引きで撮ってきていただいて、スマホで見せていただけるといいですね。どんな間取りになっていて、どこに窓があって、どんなものが置かれているのか。それを見せていただくことによって、具体的なイメージを私たちも浮かべることができます」
カフェや飲食店などのグリーン選びをコンサルティングしているのも、黒木さんのようなプロの人たち。視覚でイメージと予算を要求することがスムーズに話が進む近道かもしれません。
「写真がない場合は、店内のディスプレイなどで大きさを教えていただき、擬似的に部屋をイメージさせていただくこともあります。ぜひ、ご相談いただけたらと思います」

次回、<後編>はプロが指南するグリーンの上手な育て方、おや?と思うときの対処法をお伝えします。

取材・文:上阪徹
兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスに。幅広く執筆やインタビューを手がける。著書に『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)、『職業、挑戦者 澤田貴司が初めて語るファミマ改革』(東洋経済新報社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『メモ活』(学研プラス)他多数。
Webプロデューサー・編集:丸山香奈枝
撮影:刑部友康

撮影協力:第一園芸田園調布店